相続が発生すると、銀行・証券・登記・年金・保険など、いくつもの窓口で**「亡くなった方の戸籍をぜんぶ出してください」と言われます。何冊にもなる戸籍束を持ち歩くのは大変——そんな負担を一気に減らすのが、法務局の「法定相続情報証明制度」**です。
ひとことで言うと
申出人が作成した一覧図に法務局が認証文を付け、その写しを無料で必要な通数交付してくれる制度。
平成29年(2017年)にスタートし、現在も全国の法務局で利用できます。
何がそんなに便利なの?
① 戸籍束を何度も提出しなくて済む
通常、銀行で名義変更するたびに戸籍束を提出し、返してもらってから次の銀行へ——という流れになります。一覧図の写しがあれば、戸籍束の代わりにそのまま提出できます。
② 交付手数料は無料で、複数枚もらえる
申出時に必要な通数を伝えれば、その分まとめて交付してもらえます。再交付も無料です(一覧図は申出日の翌年から起算して5年間保存され、その間は再交付を受けられます)。ただし、添付する戸籍などの取得手数料は別途かかります。
③ 複数手続きを同時並行で進められる
複数枚もらえるので、
- A銀行:名義変更
- B証券:名義変更
- 法務局:相続登記
- 年金事務所:未支給年金請求
を同時に進められます。相続手続き全体のスピードが大きく上がります。
必要書類
申請時に必要な主な書類は以下のとおりです。
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍含む) | 本籍地の市区町村 |
| 被相続人の住民票の除票 | 最後の住所地の市区町村 |
| 相続人全員の戸籍謄抄本 | 各相続人の本籍地 |
| 申出人の本人確認書類(運転免許証コピー等) | — |
| 法定相続情報一覧図(自分で作成) | テンプレートは法務局HPに有り |
「法定相続情報一覧図」は自分で作成して提出します。家系図のような図を、法務局のひな形に従って作るだけです。
申請の流れ
- 戸籍一式を集める
- 法務局HPからテンプレートを入手し、一覧図を作成
- 申出書とともに法務局へ提出(窓口のほか郵送も可。その他の方法が使えるかは申出先の法務局にご確認ください)
- 後日、認証文付きの一覧図の写しが交付される(かかる日数は法務局や混雑状況によって異なります)
申出先は次の4か所のいずれかから選べます。
- 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
- 被相続人の本籍地を管轄する法務局
- 申出人の住所地を管轄する法務局
- 被相続人名義の不動産の所在地を管轄する法務局
使うときの注意点
① 数次相続には別途対応が必要
被相続人の相続人が亡くなっている場合(数次相続)は、一覧図を別途作成する必要があります。複数枚の一覧図でも処理可能です。
② 廃止・更新がある場合
5年以内なら再発行可能ですが、それを過ぎると改めて申請が必要です。
③ 一部の私的手続では使えない可能性
ほとんどの金融機関・法務局・年金事務所では使えますが、稀に「戸籍の現物を見たい」と言われる場面もあります。事前確認すると安全です。
こんな人には特に向いています
- 銀行口座が3つ以上ある
- 不動産が複数ある
- 証券口座・保険・年金など手続きが多い
- 仕事を休んで何度も窓口に通えない
逆に、銀行1つ・不動産1件だけのシンプルなケースなら、わざわざ作らなくても戸籍を直接使ったほうが早いこともあります。
まとめ
法定相続情報証明制度=相続手続きの時短ツールです。一覧図の写しの交付手数料は無料で、相続登記では戸除籍謄本の束の代わりに添付書類として使えます(戸籍の取得手数料などの実費は別途かかります)。「戸籍が束で大変…」と感じたら、まずはこの制度を検討するのが正解です。