「相続したけど、親がどこに不動産を持っていたか分からない」——これは相続現場で非常に多い悩みです。これまでは市区町村ごとに「名寄帳」を取り寄せるしかなく、抜け漏れリスクが避けられませんでした。

そこで令和8年(2026年)2月2日から運用が始まったのが**「所有不動産記録証明制度」**です。全国の不動産を一覧化できる、相続実務を一変させる仕組みです。

制度のひとことまとめ

特定の人が全国に所有している不動産を、法務局が一覧にして証明書として交付してくれる制度。

これまで、不動産は市区町村単位でしか把握できませんでした。新制度では法務局が全国の登記データを横断検索するため、把握漏れを大きく減らせます。

何が変わる?従来との比較

項目 従来(名寄帳) 所有不動産記録証明制度
対象範囲 市区町村単位 全国
申請先 各市区町村 法務局(全国どこでも可)
オンライン 一部のみ
1通の手数料 自治体により無料〜数百円 書面1,600円/オンライン1,500円(郵送)・1,470円(窓口交付)

こんな人に役立つ

  • 相続が発生して、被相続人がどこに不動産を持っていたか分からない
  • 親が単身赴任や転勤で複数地域に住んでいた
  • 名寄帳取得で何度も役所に通った経験がある
  • 自分の名義の不動産を一覧で確認したい

申請できる人

  • 本人(自分の所有不動産を確認したい場合)
  • 相続人(被相続人の所有不動産を調査するため)
  • 法定代理人等

戸籍などで「相続人であること」を証明できる書類が必要になります。

手数料

  • 書面請求(窓口):1件あたり1,600円(収入印紙)
  • オンライン請求・郵送交付:1,500円
  • オンライン請求・窓口交付:1,470円

書面で交付されるため、相続登記や金融機関手続きで提示に使えます。

ただし「万能」ではない——3つの限界

新制度は便利ですが、次の点には注意が必要です。

① 検索条件は「氏名+住所」(生年月日は使われない)

検索は「氏名(名称)の前方一致、かつ住所の市区町村までが一致」または「氏名の前方一致、かつ住所の末尾5文字が一致」という条件で行われ、生年月日は検索条件に含まれません。そのため旧姓・引越し履歴のあるケースでは漏れる可能性がある一方、同名異人の不動産が結果に混ざることもあります。法務省も網羅性には限界があると案内しています。

② 古い手書き登記簿は対象外の可能性

電子化されていない登記が一部残っている地域では、検索しきれないケースもあり得ます。

③ 「所有者として登記されている」不動産のみ

たとえば未登記建物や、被相続人がまだ登記簿に反映されていない物件は出てきません。

それでも使うべき3つの理由

  1. 全国横断で一気に把握できる
  2. オンライン対応で出向く必要がない
  3. 相続登記の前段階として最強のツール

特に、相続登記の義務化(2024年4月開始・期限3年。2024年3月以前に発生していた相続は2027年(令和9年)3月31日が期限)とセットで考えると、「不動産の特定 → 登記」を一気通貫で進められるため、相続人にとってのメリットは非常に大きいです。

実務上の使い方

ステップ1:相続発生

被相続人の戸籍・住民票除票を取得し、住所と生年月日を確定。

ステップ2:所有不動産記録証明書を取得

法務局(窓口またはオンライン)で1,600円を払って申請。

ステップ3:登記事項証明書で個別確認

リストアップされた物件について、登記事項証明書を取得し、現在の権利関係を確認。

ステップ4:相続登記の申請

通常の相続登記、または相続人申告登記でひとまず義務を履行。

まとめ

所有不動産記録証明制度は2026年2月2日にスタートした、相続実務における大きな進歩です。これまで「親の不動産が全国どこにあるか分からない」と頭を抱えた相続人にとって、強力な解決ツールになります。新制度を活用すれば、義務化の期限(原則3年)内に漏れなく登記することが現実的になります。


出典(一次情報)