不動産を相続するときは、原則として遺産分割協議書が必要になります。書式を1か所でも間違えると、法務局で**補正(書き直し)**を求められ、ハンコをもらい直しになることも。この記事では、法務局のひな形に準拠した書き方を、ポイントを絞って解説します。
遺産分割協議書とは
法定相続人全員が、亡くなった方(被相続人)の遺産をどう分けるかを話し合い、その結論を文書にしたもの。
協議が成立するには相続人全員の合意が必要で、1人でも欠ければ無効になります。あわせて、相続登記に使うためには全員の実印による押印と印鑑証明書の添付が求められます。
必須の記載事項
最低限、以下が揃っている必要があります。
- タイトル:「遺産分割協議書」
- 被相続人の表示:氏名・最後の本籍・最後の住所・死亡年月日
- 協議書の前文:相続人全員で協議した旨
- 財産の内容:誰が何を取得するか
- 後日判明した財産の取り扱い:トラブル防止のため
- 作成日・相続人全員の住所・氏名・実印押印
不動産の書き方が一番重要
不動産は登記事項証明書(登記簿謄本)どおりに記載します。住所表記ではダメです。
土地の場合
所在 〇〇市〇〇町一丁目
地番 12番3
地目 宅地
地積 150.25㎡
建物の場合
所在 〇〇市〇〇町一丁目12番地3
家屋番号 12番3
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.30㎡
2階 50.20㎡
よくある間違い
- ❌「東京都〇〇区〇〇1-2-3」と住所で書く → 補正を求められる
- ❌ 地番を「2-3」のようにハイフン表記 → 「12番3」と書く
- ❌ 床面積を四捨五入 → 登記簿どおり「.25㎡」まで正確に
迷ったら、登記事項証明書を取得して、そのまま転記しましょう。登記事項証明書は、最寄りの登記所(法務局)の窓口で全国の不動産のものを請求でき、オンラインや郵送でも請求できます。
ひな形(不動産のみのシンプル版)
遺産分割協議書
被相続人 山田太郎
最後の本籍 東京都〇〇区〇〇一丁目2番3号
最後の住所 東京都〇〇区〇〇一丁目2番3号
死亡年月日 令和7年4月15日
上記被相続人の遺産について、共同相続人全員で協議した結果、
下記のとおり分割することに合意した。
第1条 次の不動産は、山田一郎が取得する。
1.土地
所在 〇〇市〇〇町一丁目
地番 12番3
地目 宅地
地積 150.25㎡
第2条 本協議書に記載のない遺産が後日判明したときは、
共同相続人全員で改めて協議する。
以上のとおり協議が成立したことを証するため、本書2通を作成し、
相続人全員が署名・押印のうえ各自1通を保有する。
令和8年5月20日
相続人 住所 〇〇市〇〇町一丁目2番3号
氏名 山田一郎 実印
相続人 住所 〇〇市〇〇町一丁目4番5号
氏名 山田花子 実印
つまずきポイント5選
① 相続人が1人でも協議書なしの誤解
相続人が1人だけなら協議は不要ですが、それ以外は全員の合意が必須。「面倒だから親族の代表が代筆」はNGです。
② 認知症の相続人がいるケース
判断能力が不十分な相続人がいる場合、成年後見人を選任しないと有効な協議ができません。これを飛ばすと協議書ごと無効になる可能性があります。
③ 未成年の相続人がいるケース
親も相続人の場合は利益相反になるため、特別代理人の選任が必要です(家庭裁判所)。
④ 数次相続のケース
被相続人の相続人が、遺産分割前に亡くなっている場合、その人の相続人全員が協議に参加します。協議書の被相続人欄を連名で書くなどの工夫が必要です。
⑤ 印鑑証明書の有効期限
協議書自体には期限はありませんが、金融機関の手続きでは3か月以内のものを求められることが多いです。
まとめ
遺産分割協議書は**「不動産の表記の正確さ」と「全員の実印押印」**の2点が特に重要です。法務局の「登記手続案内」では、登記申請書の作成に必要な一般的な情報の提供を受けられます(完全予約制・1回20分以内)。ただし、申請書類の事前チェックや個別の事案についての助言は行われず、登記が完了することの保証もない点に注意しましょう。