「自分で相続登記をしたいけど、書類の書き方が分からない」「司法書士に頼む前に手順を知りたい」——そんなときに使えるのが、法務局の登記手続案内(従来「事前相談予約」と呼ばれてきた制度)です。無料で、登記申請書の作成に必要な情報を案内してもらえます。本記事で活用法を解説します。
事前相談予約とは
法務局の職員が、登記申請書の作成等に必要な情報を無料で案内してくれる制度。
正式名称は**「登記手続案内」**。各法務局が予約制で実施しています。
何を相談できる?
- 相続登記の手続き全般
- 必要書類のチェック
- 申請書の記載方法
- 遺産分割協議書の書き方
- 登録免許税の計算方法
ただし、個別の法律相談(誰に相続させるべきか、遺留分はどうかなど)は対象外。あくまで登記手続そのものに関する案内です。
利用のメリット
① 完全無料
司法書士に頼むと数万円かかる相談が、無料で受けられます。
② 申請書を持参すると案内が具体的になる
自分で作成した申請書類を持参すると、記載方法についてより具体的な案内を受けやすくなります。ただし、書類の点検や審査をしてもらえる制度ではありません。
③ 申請先の法務局から直接聞ける
実際に申請を受け付ける法務局から直接説明を聞けるのは、大きな利点です。ネット上の古い情報だけに頼らずに済みます。
④ 手戻りを減らせる
申請前に書き方を確認しておくことで、補正のやり取りを減らせる場合があります(案内を受ければ必ず登記が完了する、というものではありません)。
利用方法
ステップ1:管轄法務局を確認
不動産所在地を管轄する法務局を確認します。
ステップ2:予約する
各法務局に電話で予約するほか、法務省の「法務局手続案内予約サービス」からオンラインで予約することもできます。案内は
- 1回20分以内
- 完全予約制
- 平日のみ
- 電話・法務局窓口での対面・ウェブ会議から選択
という運用です。混雑時は予約が先の日程になることもあります。
ステップ3:必要書類を準備
事前にできる限りの書類を揃えて持参すると、相談が充実します。
- 登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 戸籍謄本(あれば)
- 遺産分割協議書の案(あれば)
- 自分で作成した登記申請書(あれば)
「全部揃ってから」ではなく、手元にある書類を持って行けばOK。
ステップ4:当日
予約した方法(電話・法務局の窓口・ウェブ会議)で、法務局の職員から個別に案内を受けます。
こんなケースに特におすすめ
ケース1:シンプルな相続登記を自分でやりたい
司法書士に頼むほどでもないが、形式チェックは受けたい人。
ケース2:見積もり前に概要を把握したい
司法書士に頼む前に、自分のケースの難易度を把握しておきたい人。
ケース3:申請書の細かい記載に不安がある
遺産分割協議による相続、法定相続による相続、遺言による相続でひな形が異なります。自分のケースで正しい書式を使っているか確認したい人。
ケース4:数次相続・代襲相続が絡む
必要になる戸籍の範囲や申請書の書き方など、複雑なケースの初動を確認できます(誰がどれだけ相続するかといった法的判断は対象外です)。
注意点
① 個別の法律判断はしてくれない
「誰がどれだけ相続すべきか」「遺留分の主張は通るか」など、法律相談は対象外です。これらは弁護士・司法書士へ。
② 申請の代行はしてくれない
あくまで案内なので、実際の申請は自分で行う必要があります。書類作成も自分で。
③ 待ち時間が長い場合がある
予約制とはいえ、混雑する法務局では待ち時間が発生します。午前一番の予約が比較的スムーズです。
④ 1回で完結しないこともある
「次回までにこの書類を集めてきてください」と言われて、複数回通うケースもあります。
司法書士に頼む場合との使い分け
| 状況 | おすすめ |
|---|---|
| 自分でやる予定で、書類だけチェックしたい | 事前相談予約で十分 |
| 戸籍集めから全部任せたい | 司法書士に依頼 |
| 紛争の可能性がある | 弁護士に相談 |
| 遺産分割の方針が決まっていない | 司法書士・弁護士に相談 |
相続登記の義務化を受けた案内資料
2024年4月1日の相続登記の申請義務化を受けて、法務省は相続登記や相続人申告登記の手続案内資料を公開しています。詳しくは法務省・各法務局のサイトをご確認ください。
ウェブ会議による案内も利用できます
全国の法務局・地方法務局の本局で、ウェブ会議を使ったウェブ登記手続案内が実施されています。事前登録のうえ「法務局手続案内予約サービス」から予約します。
まとめ
- 法務局の登記手続案内は無料(1回20分以内・完全予約制)
- 申請書の書き方について案内を受けられる(書類の点検・審査はしてもらえない)
- 不動産所在地の管轄法務局に電話または「法務局手続案内予約サービス」で予約
- 法律相談・申請代行は不可
- 司法書士に頼む前のセカンドオピニオンとしても有効
自分で相続登記をするなら、一度は登記手続案内を利用してみることをおすすめします。申請を受け付ける法務局から、手続きの進め方を無料で案内してもらえます。