「遺言ってどう書けばいいの?」と聞かれたとき、選択肢は大きく**「自筆」「公正証書」**の2つです。ぱっと見では「自筆のほうが安そう」に見えますが、現場ではいろいろな落とし穴があります。本記事で、両者を5つの軸で比較します。

一覧比較表

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成者 本人が手書き 公証人が作成
場所 自宅・どこでも 公証役場(出張も可)
証人 不要 2人必要
費用 紙とペンのみ(保管制度利用なら3,900円) 数万円〜十数万円
検認 必要(保管制度利用時は不要) 不要
改ざん・紛失リスク あり(保管制度で解消可) ほぼなし
無効リスク 形式不備で無効になりやすい ほぼなし

① 費用の違い

自筆証書遺言

  • 自分で書くだけなら0円
  • 法務局の保管制度を使っても3,900円

公正証書遺言(2025年10月改正版)

財産の価額に応じて、公証人手数料が変動します。2025年10月1日に約20年ぶりの改正があり、一部の金額が変わっています。

財産の価額 手数料(2025年10月〜)
50万円以下 3,000円(新設)
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 13,000円(旧11,000円から増額)
1,000万円以下 20,000円(旧17,000円から増額)
3,000万円以下 26,000円(旧23,000円から増額)
5,000万円以下 33,000円(旧29,000円から増額)
1億円以下 49,000円(旧43,000円から増額)

※ 手数料は相続・遺贈を受ける人ごとに財産の価額を分けて計算し、それを合算するため、実際の総額は個別事情で変わります。1億円を超える場合の区分も含め、最新の金額は日本公証人連合会のサイトまたは最寄りの公証役場でご確認ください。

これに加えて、

  • 遺言加算(全体財産1億円以下の場合):13,000円(旧11,000円から増額)
  • 正本・謄本作成料:1枚300円(旧250円から増額)、または電子データ2,500円

合計で3万〜10万円程度が目安です。

② 安全性の違い

公正証書遺言は公証人という法律の専門家が作成し、証人2人が立ち会います。形式不備で無効になる可能性はほぼゼロ。原本は公証役場に保管され、改ざん・紛失リスクもありません。

自筆証書遺言は手軽な反面、

  • 日付の書き忘れ
  • 押印漏れ
  • 共同遺言(夫婦連名)はNG
  • 加筆訂正のルール違反

など、形式不備で無効になるケースが少なくありません。

③ 検認の有無

種類 検認
自筆(手元保管) 必要(1〜2か月かかる)
自筆(法務局保管制度) 不要
公正証書 不要

検認は家庭裁判所での手続きで、相続人全員に通知が行きます。「相続人同士が険悪」な家庭では、検認を機にトラブルが表面化することも。検認不要の選択肢が圧倒的に楽です。

④ 手間と心理的ハードル

自筆は思い立った日に書ける手軽さがありますが、公正証書は公証役場との事前打ち合わせ証人2人の手配当日の出頭が必要です。とはいえ、公証役場は予約制で、手続き自体は1〜2回の訪問で完了します。

⑤ どちらが向いている?

自筆証書遺言が向く人

  • 財産がシンプル(不動産1件+預金少々)
  • 相続人同士の関係が良好
  • まずは試しに作りたい
  • 法務局保管制度を使う前提

公正証書遺言が向く人

  • 財産が多い・複雑(複数物件・自社株など)
  • 遺留分対策が必要
  • 相続人同士で揉めそう
  • 体調・判断能力に不安があり、第三者に立ち会ってほしい
  • 後で「無効だ」と争われたくない

まとめ

「気軽さ」の自筆、「鉄壁」の公正証書——これが両者の本質です。法務局保管制度の登場で自筆の弱点はかなりカバーされましたが、確実に遺志を実現したい場合は公正証書が今でもベストな選択肢です。費用と安心感を天秤にかけて選びましょう。


出典(一次情報)