遺言書があると、相続登記の手間が大きく減ります。「相続人全員のハンコ」がいらず、遺言で指定された人だけで登記が進められるからです。ただし、遺言の種類によって手続きの入口が変わります。この記事では3つのパターン別に、流れと書類を整理します。

まず押さえる3つの遺言の種類

種類 作成方法 検認の要否
自筆証書遺言(手元保管) 本人が自筆 必要
自筆証書遺言(法務局保管) 本人が自筆+法務局に保管 不要
公正証書遺言 公証役場で作成 不要

「検認」とは、家庭裁判所で遺言書の存在・内容を確認してもらう手続きです。検認しないまま勝手に開封すると5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。

パターン①:自筆証書遺言(手元保管)の場合

  1. 家庭裁判所に検認を申立て
  2. 検認済証明書を交付してもらう
  3. 法務局に相続登記を申請

検認には1〜2か月かかります。期限内(相続登記義務化の3年)に間に合うよう、早めの行動が大事です。

パターン②:法務局保管制度を使った自筆証書遺言

2020年7月にスタートした制度で、検認が不要になります。

  1. 法務局で**「遺言書情報証明書」**を取得
  2. これを使って相続登記を申請

検認のステップが丸ごとなくなるため、最短ルートで進められます。

パターン③:公正証書遺言の場合

公証人が作成しているため、こちらも検認不要

  1. 公証役場から正本または謄本を受領
  2. それを添付して相続登記を申請

公証役場で「遺言検索システム」を使えば、亡くなった方が遺言を残しているかを全国の公証役場から検索できます(相続人が請求可能)。

遺言ありの相続登記で必要な書類

  • 遺言書(正本・謄本・遺言書情報証明書のいずれか)
  • 検認済証明書(検認が必要だった場合)
  • 被相続人の死亡が分かる戸籍(出生〜死亡まで不要)
  • 不動産を取得する人の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 登記申請書

遺言書がない場合と比べて、戸籍は**「死亡が分かる戸籍」だけで足りる**ケースが多く、書類集めが大幅に楽になります。

「相続させる」と「遺贈する」の違いに注意

遺言の文言で手続きが変わります。

  • 「相続させる」(相続人に対して)→ 取得者の単独申請でOK
  • 「遺贈する」(相続人以外も対象になり得る)→ 原則として相続人全員 or 遺言執行者との共同申請

ただし2023年4月1日施行の不動産登記法改正で、相続人への遺贈は受贈者の単独申請が可能になりました。「相続人以外への遺贈」は引き続き、遺言執行者または相続人全員との共同申請になる点に注意してください。

期限と義務化

遺言書があっても相続登記の義務化は適用されます。期限は「不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内」です。なお、2024年(令和6年)4月1日より前に相続したことを知った不動産で相続登記がされていないものは、2027年(令和9年)3月31日までに申請する必要があります。遺言書を見つけたら、「自分の代では使わないから」と放置せず、早めに動くのが正解です。

まとめ

  • 遺言書があれば相続登記は格段に楽
  • 自筆(手元)→ 検認必要/法務局保管・公正証書 → 検認不要
  • 「相続させる」と「遺贈する」で申請方法が変わる
  • 義務化の3年期限は同じく適用

出典(一次情報)