「親の家を相続したけど、登記簿に建物がない…」——意外に多いのが未登記建物です。古い家や増築部分、農作業小屋などで頻繁に出てきます。本記事で、その手続きと放置のリスクを整理します。
そもそも未登記建物とは
登記簿に建物の存在自体が記録されていない物件。
通常、新築すると表題登記(建物表示登記)を1か月以内に行い、その後、所有者を示す所有権保存登記を行います。これらが行われずに放置されている建物が「未登記建物」です。
なぜ未登記のまま残るのか
- 自己資金で建てた(ローンを組まなかった)ため、金融機関に強制されなかった
- 親世代の意識として「住んでいれば自分のもの」だった
- 増築部分だけが未登記
- 戦前・戦後の混乱期に登記しなかった
固定資産税は市区町村が現地調査で課税するため、未登記でも税金は払っているケースが大半です。これも「気付かないまま放置」される一因です。
未登記建物の見分け方
- 登記事項証明書を取得する → 「建物」の登記がなければ未登記
- 固定資産税の課税明細で「未登記」と記載されていることも
- 市区町村の家屋台帳で建物の存在を確認
表題登記の義務と期限
不動産登記法第47条第1項により、新築した建物、または表題登記がない建物(区分建物を除く)の所有権を取得した場合は、その所有権を取得した日から1か月以内に表題登記の申請が義務付けられています。これに違反すると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。
相続登記義務化との関係
相続登記の義務化(2024年4月)は**「所有権の登記」**の話で、未登記建物の表題登記はもともと別の義務として規定されています。つまり、未登記建物を相続した場合、
- 表題登記:取得から1か月以内(不動産登記法47条)
- 所有権保存登記:表題登記後に申請
の2段階で手続きを進める必要があります。
相続した未登記建物の手続き
ステップ1:建物の特定
固定資産税の課税明細・家屋台帳・現地確認で、建物の所在・規模・構造を確定します。
ステップ2:遺産分割協議
相続人全員で「誰がこの建物を取得するか」を協議し、協議書に明記します。未登記建物も正確に表示しないと無効になりかねないので、家屋台帳や課税明細をもとに記載します。
ステップ3:表題登記の申請
土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。本人申請も可能ですが、
- 建物図面・各階平面図の作成が必要
- 現地調査と測量が必要
など専門的な作業が多く、プロに任せるのが現実的です。費用は5万〜15万円程度。
ステップ4:所有権保存登記
表題登記が完了したら、自分で、または司法書士に依頼して所有権保存登記を申請します。所有権保存登記の登録免許税は**評価額の0.4%**で、登記原因によって税率は変わりません。
放置するとどうなる
売却・担保設定ができない
未登記建物は登記簿で所有者を証明できないため、買主や金融機関から敬遠されます。売買や担保設定の前に、表題登記・所有権保存登記を済ませるよう求められるのが一般的です。
過料のリスク
不動産登記法上の表題登記義務違反として、10万円以下の過料の対象です(実際の適用は稀ですが、義務違反の状態が続きます)。
解体時にも問題
家を取り壊す場合、未登記建物だと滅失登記もありません。市町村への家屋滅失届だけでは固定資産税対策にとどまり、登記面の整理ができていない状態が残ります。
数次相続でさらに困難に
未登記のまま代替わりすると、誰が所有者か証明する書類がますます揃わなくなります。築年数が古い建物ほど、放置すると後の世代がさらに苦労します。
費用の目安
| 手続き | 費用 |
|---|---|
| 土地家屋調査士による表題登記 | 5万〜15万円 |
| 司法書士による所有権保存登記 | 2万〜5万円 |
| 登録免許税(所有権保存) | 評価額×0.4% |
合計で10万〜20万円程度が一般的です。
まとめ
- 未登記建物の表題登記は取得から1か月以内
- 義務違反は10万円以下の過料
- 売却・担保設定・滅失登記のいずれもできない
- 土地家屋調査士+司法書士に依頼するのが現実的
「築年数が古いから」「税金は払ってるから」と放置していると、次世代に負担が回りやすくなります。相続を機に、未登記建物の整理を進めましょう。